「DX(デジタルトランスフォーメーション)を進めろ」と言われても、製造業の現場では何から始めればいいのか分からない——
そんな悩みを抱えていませんか?
この記事では、DX推進部門に所属していない現場担当者である私が、実際に経験した成功・失敗事例を交えながら「現場主導型DX」の進め方をわかりやすく解説します。
私はDX推進部門の人間ではありません【現場担当者のリアル】
まずお伝えしておきたいのは、私はいわゆるDX推進部門の社員ではなく、製造現場の保全・改造チームに所属している現場担当者です。
日々、設備の修繕や改善に追われる中で、現場目線の課題解決としてDXを始めました。
DX推進課は別部署にあり、全社規模のIoT導入やERP展開を担当していますが、現場の細かな業務課題には手が回っていません。
そのため、現場レベルのDXは自分たちで進めるしかない。そう気づいてから、私は“1人DX推進担当”として、現場課題を一つずつデジタルで解決する取り組みを始めました。
DX推進が現場で失敗する理由とは?【あるある失敗事例】
多くの企業でDXの第一歩として「ペーパーレス化」に取り組んでいますが、Excel帳票の複雑化や現場の反発によって、逆に業務が非効率になることも。
失敗の一例:
- Excelに複雑な関数やマクロを詰め込みすぎる
- 現場から「結局紙の方が早い」という声が上がる
- システムに使われてしまい、使い勝手が悪化
このようなケースでは、「ペーパーレス化に失敗した」のではなく、現場目線のUI/UXを無視したことが失敗の本質です。
成功事例:Microsoft Teamsで実現した現場DX
一方で、私が現場で導入して成功したDXの事例が、Microsoft Teamsによる情報共有のデジタル化です。
Before:
- 紙ベースの引き継ぎノートに手書き記録
- 担当が変わるたびに情報の抜け漏れ
After:
- Teams上にチャンネルを作成し、日報や注意事項を共有
- 情報がリアルタイムに共有・蓄積され、属人化が大幅に改善
導入から1週間で紙の運用を完全廃止できた理由は、以下の4点:
- 現場が「楽になる」と実感できる機能に絞った設計
- 不要な機能は使わない(シンプル設計)
- 「元に戻さない」と明言し、文化として定着させた
- まずは小さく導入し、使いながら改善(アジャイル方式)
DX定着のカギは「初回体験の良さ」にある
どんなに便利なツールでも、最初の印象が悪ければ二度と使われない。
現場においては特にこの傾向が強く、「分かりにくい」「使いにくい」と思われた瞬間にDXは失敗します。
逆に、「これ、めっちゃ楽じゃん」と思わせられれば、誰も止めなくても現場で自然に使われ続けます。
だからこそ、初期設計段階でのUI/UX設計は最重要課題です。
DXを支えるのは、プログラマーではなく「現場で使い続ける人」
現場DXの成功には、優れたエンジニアよりも、日々の業務でツールを使いこなす“地道な実践者”の存在が重要です。
- RPAや業務アプリは「動かし続ける人」がいないと無意味
- 難しいコードよりも「現場業務に合った運用力」が鍵
- 少しでも自分で触れる人材の育成が、現場DX成功の土台
現場が「作る・育てる・直す」を自律的に回せるようになれば、DXは自然と前に進みます。
製造業のDXは現場が主役。正解は“現場の数だけ”ある
DXにおいて、万能の正解はありません。業種・業態・企業文化に応じて、アプローチや導入ステップは変わります。
だからこそ、現場の小さな困りごとにフォーカスし、小さく試して改善を繰り返す、アジャイル的な進め方が最も現実的です。
私自身、数多くの失敗を経験しています。それでも、成功体験を一つずつ積み重ねていくことで、現場にDXが根付いてきました。
【まとめ】現場DXの第一歩は、目の前の“面倒くさい”から
「なんか面倒だな」「またこの作業か…」
そんな日常の不満こそが、DXの起点です。
本記事を読んで、「うちの現場でもやってみようかな」と思った方は、まず1つ、自分の手でできる小さなDXを始めてみてください。